金属の硬度~重要性と4つの試験方法~

2021年11月30日(火)
2021年11月30日(火)

金属製品を造る、あるいは部品やパーツ、ねじに金属素材のものを採用する際には「硬度」を把握しておくことが非常に重要です。この記事では硬度の重要性や測定する方法について解説します。便利な硬度換算表も掲載していますので、プロの方にとっても役立つ内容となっています。

金属部品製作~硬度の重要性~

加工がしやすい、強度が高い、耐摩耗性や耐熱性が高い、精度が高いなど、金属を部品の素材として採用するメリットはさまざまあります。しかしながら、金属のもつ特性を把握し、適切な素材を選ばなければ、それらのメリットを十分に享受することができません。
適切な金属素材を採用しなかったことで、「思ったよりも強度が低かった」「加工がしにくかった」というようなトラブルが発生するリスクが高くなります。

こうした失敗を防ぐために、採用しようと考えている素材の性質をあらかじめ調査することは必須で、とりわけ硬度は最低限押さえておくべき指標と言えます。

そもそも硬度って何?

硬度とは読んで字のごとく、金属の「硬さ」を示す指標です。後述する検査方法を用いることで、その金属素材が硬いのか?柔らかいのか?を判定することができます。
金属の種類によって硬さはまちまちです。たとえば銀や銅、アルミは比較的柔らかい金属です。鉄は非常に硬い金属で、さらに他の物質を混合させた鋼はそれ以上に硬度が高くなります。

硬度が高ければ高いほど、その素材が硬いことになり、変形しにくい、傷がつきにくいといった機械的性質が高いと言えます。ただし、あまりにも硬すぎると加工がしにくいなどのデメリットも生じるため、一概に硬度が高ければ高いほど良いというわけでもないことには注意が必要です。

【豆知識】強さを図るその他の指標

金属の強さを示す指標は硬度だけではありません。たとえば「どれくらい衝撃を吸収できるか?」を数値化した「衝撃値」や、どれだけ疲労(応力が加わることで強度が低下すること)に耐えられるかを示す「疲労強度」、摩耗(すり減ること)に耐えられるかを示す「耐摩耗性」、どれくらいの温度にまで耐えられるかを数値化した「耐熱性」などさまざまです。

たとえば、衝撃が加わる部分を留める部品やパーツに金属を使用する場合、硬度だけではなく衝撃値を考慮する必要があります。使用条件や使用環境に応じてそれぞれの指標を見ながら素材を選定することが重要です。

4つの硬度調査方法

金属の硬さを触って正確に調べることは不可能です。また、何をもってして「硬い」か「柔らかいか」という基準は人によってそれぞれです。金属素材の硬度は以下の4つの方法で測定し、具体的な数値で表すことが可能です。

以下にそれぞれの測定の仕方や算出できる数値、特徴などを簡潔に解説します。 余談となりますが、樹脂(プラスチック)にも硬度調査方法があります。樹脂の硬度について知りたい方は
「樹脂(プラスチック)の硬度とは?試験方法から役立つ情報を解説」

ビッカーズ硬さ

●●(数値)HV」という単位で示されます。「押し込み硬さ」とも呼ばれます。試験片に尖ったダイヤモンド圧子を一定の力(JIS規格では10gf~100kgf)で押し付け、できたくぼみの大きさによって金属素材の硬さを測定します。くぼみが小さければ小さいほど、その素材は硬いということになります。できるくぼみは非常に小さい(0.5mmほど)ため、顕微鏡で測定します。また、試験前にはくぼみが測定できるよう表面を研磨する必要があります。

ロックウェル硬さ

HRA」や「HRC」といったスケールで示されます。
ダイヤモンドやタングステンカーバイトボールでできた直径1mmの球を押し付けてできたくぼみの深さによって硬度を測定する方法です。ビッカーズ硬さと同様、「押し込み硬さ」に分類されます。金属素材そのものだけでなく、表面硬化材、被膜、溶接材、あるいは樹脂・プラスチック素材にも用いられる硬度測定法です。ビッカーズ硬さと比較するとかける力が強いため、大型の試験片などにも使われます。

ブリネル硬さ

HB」という単位で表されます。鋼球圧子や超合金圧子を押し込んだ荷重を、それによってできたくぼみの表面積によって割ることで算出する方法です。くぼみの直径は最大で5mmと比較的大きく、硬さが不均一な鍛造品や鋳造品などに用いられます。一方でかかる力が大きく、くぼみも深くなるため、薄物や小物の硬度測定には向かないという側面もあります。

ショア硬さ

HS(Hs)」という単位で表されます。別名は「反発硬さ」です。試験片にダイヤモンドを埋め込んだ鋼製のハンマーを落下させ、跳ね返る高さによって硬度を測定します。跳ね返る高さが高ければ高いほど、その素材が硬いことになります。これまでの押し込み硬さを調べる方法とは異なり、傷やくぼみができないため、試験片をそのまま部品や製品として使うことも可能です。ただし、押し込み硬さよりも測定精度は若干劣ることがあります。

硬度換算表の有効性

上記のような方法を用いることで金属素材の硬度を調べることはできます。しかし、ネックになるのは単位です。ビッカーズ硬さはHVという単位で表されますが、ロックウェル硬さはHRAやHRCという記号で表されます。たとえば、ビッカーズ硬さで硬度を測定した金属製品を納めるときに、ロックウェル硬さが基準になっている場合は、改めて試験を行い、ロックウェル硬さを求めなければならないことになってしまいます。一回一回試験を行うのは非常に手間です。

硬度換算表を使えばあらかじめ試験で得られた結果を別の硬度に変換することができます。ビッカーズ硬さで求めた硬度をロックウェル硬度に換算する、あるいは逆にロックウェル硬度からビッカーズ硬さを求めることも可能です。

硬度換算表

下表が硬度換算表です。たとえば「ロックウェル硬さ85HRA」と同じ行を見ればビッカーズ硬さは940HV、ショア硬さは97HS相当であることがわかります。このように特定の硬度さえわかっていれば、他の単位にも瞬時に換算することができるので非常に便利です。すぐに使えるので、ぜひブックマークなどで保存していただければと思います。

ビッカーズ硬さ
(HV)
ブリネル硬さ
(HB)
ロックウェル硬さ ショアー硬さ
(HS)
Bスケール
(HRB)
Cスケール
(HRC)
940 68.0 97
920 67.5 96
900 67.0 95
880 66.4 93
860 65.9 92
840 65.3 91
820 64.7 90
800 64.0 88
780 63.3 87
760 62.5 86
740 61.8 84
720 61.0 83
700 60.1 81
690 59.7
680 59.2 80
670 58.8
660 58.3 79
650 57.8
640 57.3 77
630 56.8
620 56.3 75
610 55.7
600 55.2 74
590 54.7
580 54.1 72
570 53.6
560 53.0 71
550 505 52.3
540 496 51.7 69
530 488 51.1
520 480 50.5 67
510 473 49.8
500 465 49.1 66
490 456 48.4
480 448 47.7 64
470 441 46.9
460 433 46.1 62
450 425 45.3
440 415 44.5 59
430 405 43.6
420 397 42.7 57
410 388 41.8
400 379 40.8 55
390 369 39.8
380 360 (110.0) 38.8 52
370 350 37.7
360 341 (109.0) 36.6 50
350 331 35.5
340 322 (108.0) 34.4 47
330 313 33.3
320 303 (107.0) 32.2 45
310 294 31.0
300 284 (105.5) 29.8 42
295 280 29.2
290 275 (104.5) 28.5 41
285 270 27.8
280 265 (103.5) 27.1 40
275 261 26.4
270 256 (102.0) 25.6 38
265 252 24.8
260 247 (102.0) 24.0 37
255 243 23.1
250 238 99.5 22.2 36
245 233 21.3
240 228 98.1 20.3 34
230 219 96.7 (18.0) 33
220 209 95.0 (15.7) 32
210 200 93.4 (13.4) 30
200 190 91.5 (11.0) 29
190 181 89.5 (8.5) 28
180 171 87.1 (6.0) 26
170 162 85.0 (3.0) 25
160 152 81.7 (0.0) 24
150 143 78.7 22
140 133 75.0 21
130 124 71.2 20
120 114 66.7
110 105 62.3
100 95 56.2
95 90 52.0
90 86 48.0
85 81 41.0

出典「JISハンドブック鉄鋼の参考欄 硬さ換算表(SAE J 417)」
※詳しくは上記資料をご参照下さい。

金属部品のご相談はご連絡ください

金属部品やパーツ、ねじを選定する、ひいていえば金属素材や製品の取り扱いや加工に携わるにあたって硬度の話は避けることができません。ぜひ、今回の記事を参考に、硬度に対する理解を深めていただければ幸いです。

株式会社フカサワは金属部品・パーツやねじ、加工品を取り扱う専門商社です。既製品だけではなく特注品やオーダーメイド品も製作いたします。
製品の性能アップや生産性の向上、コストなどを踏まえ、素材や工程の選定や商品のご提案も可能。品質が高い商品を安定的に供給いたします。もちろん、硬度についても考慮しご提案・設計・製作・測定・納品まで一貫して対応いたします。

「こんな部品がほしい」「既製品では強度が心配」「どれくらいの硬度が適切なのか知りたい」……このようなお悩みは私たちにご相談ください。

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