ものづくりをする際には図面が欠かせません。図面には造る物の形状や寸法、材質や加工方法などが記されていて、これにもとづいて加工を行うことで、はじめて意図した物が出来上がります。
今回はものづくり初心者の方のために、図面の基本や記入方法、図面作りのポイントについてご説明します。
そもそもの設計の流れ
そもそもものづくりを行うためには「設計」という工程を経なければなりません。設計とは「どんな物を造るのか?」「どのように造るのか?」を考えることです。具体的には企画から構想に落とし込み、さらに詳細を設計して試作をし、評価をした上で図面を作成し、生産工程に移っていきます。この設計の成果が図面というわけです。
図面は大きく分けて「設計用図面」と「製作用図面」の2種類があります。それぞれどのようなものなのか?見ていきましょう。
設計用図面とは
設計用図面とはその名の通り製品や部品を設計するために作成する図面です。別名「試作図」とも呼ばれます。この設計用図面をもとに試作品を製作して評価を行い、動作や品質、コストなどに問題がなければ制作用図面を作成して生産に移ります。
仮に改良が必要になったり仕様変更が発生したりした場合は設計用図面を修正して再度試作品を造ります。
製作用図面とは
製作用図面とは実際に製品や部品を生産する際に使われる図面のことです。先ほどご説明したとおり、開発段階で設計用図面を作成して試作を行います。ここで問題がなければ製作用図面を作成して生産工程に移ります。製作用図面は設計用図面がベースとなっていて、すでに出来上がっている設計用図面に必要に応じて修正・追記して製作用図面として出図します。
ちなみに出図とは図面一式を関係部門(工場や技術部門など)に配布することを言います。
図面の基本
「ここの寸法は●mで」「ここはこういう形状で」と工場に口頭や文章で依頼するのは大変なことです。認識の違いでミスが発生するリスクもあります。図面は万人が共通の認識をもつためのツールです。
ものづくりに携わるのであれば図面について理解しておかなければなりません。技術者や設計者であれば図面を描く能力も求められます。それ以外の職種であっても、図面の意味を知っておく・読めるようになっておくことが大切です。
図面と一口に言っても、さまざまな種類があります。
投影図
投影図とは物体を正面から見たときの状態を平面で描いた図です。言い換えれば3次元のものを2次元のものに再現した図のことで、もっとも基本的な図面と言えます。
投影図はさらに物体を真上から見た「平面図」と、立体を真正面から見た「立体図」で構成されています。この2つがあることで、「その物体がどんな形をしているのか?」を把握することができます。設計者は投影図を描きながら「どんな物を造るか?」「どんな形状にするのか?」といったことを考え営業や顧客と打ち合わせを行い、工場の技術者や職人も投影図を確認しながらものづくりをします。
部分拡大図
部分拡大図とはその名前のとおり特定の部分を拡大した図のことです。製品や部品の形状によっては複雑で投影図に寸法などの情報を記入しきれないことがあります。その場合には拡大する部分を丸で囲み、「A」「B」のような記号を振って拡大図を作成して情報を記載することで、相手に伝わりやすくなります。
たとえば原図の縮尺が(1:1)となっていてAの部分を2倍に拡大したい場合は「A(2:1)」と記載します。
断面図
断面図とは物体を切断したと仮定して、その内部の構造がどうなっているのかを示した図です。病院で行うCTスキャンをイメージするとわかりやすいかと思います。
断面図には物体の基本中心線で切断した状態を表した「全断面図」、物体の中心線から片側を外形図、もう片方を断面図にした「片側断面図」、平行な2つ以上の平面で切断した断面を組み合わせて記した「合成断面図」の3種類があります。
寸法の記入方法
図面は物体を表しただけでは不十分です。形状はわかっても、どれがどれくらいの高さ、幅、奥行き、あるいは角度や位置なのかがわからないためです。図面を作成する際には必ず寸法を記入しなければなりません。
しかし、記入方法を間違えると寸法が不明確になったり誤解を招いたりするリスクがあります。そこで、寸法を記入する際の方法やルールをしっかりと把握しておきましょう。
寸法線・寸法値の記入法
図面に寸法を記載する場合は「寸法線」という線を用います。まずは寸法を表したい部分の両端に「寸法補助線」を引き、寸法補助線同士を細い実線でつなぎます。この実線のことを寸法線と言います。
寸法線の隣に寸法を記載することで、「ここからここまでの寸法は●mmです」ということを表現できます。たとえば寸法線の上に「150」と書かれている場合は、寸法線の始点と終点までの長さが150mmであることがわかります。
寸法線はなるべく図面の読み取りを邪魔しないよう工夫して記入する必要があります。長さが異なる寸法線を引く場合、たとえば内径と外形を記載したい場合などは、小さな寸法を内側に、大きい寸法が外側になるように記載します。
寸法補助記号
図面では「寸法補助記号」というものを用いて情報を伝えます。たとえば、円の直径を表現したいときに、「円の直径は●●mm」と記載すると図面が見にくくなってしまいます。寸法補助記号で円の直径もしくは円弧の直径を示す場合は「Φ」という記号を使います。円柱の図面の寸法線の隣に「Φ20」と書かれていた場合、直径が20mmであることがわかります。
他にも半径は「R」、厚みは「t」、45°の面取りは「C」というように、さまざまな寸法補助記号があります。これらについても把握しておきましょう。
記号 | 記号の意味 | 呼び方 |
---|---|---|
R | 半径 | あーる |
Φ | 直径 | まる・ふぁい |
□ | 正方形 | かく |
SΦ | 球の直径 | えすまる・えすふぁい |
SR | 球の半径 | えすあーる |
t | 厚み | てぃー |
C | 面取り | しー |
切削加工の図面作りのポイント
切削加工の図面を作成する場合にはさまざまなことに気をつける必要があります。いちばん大切なのは作業者に正しく情報が伝わることです。
加工手順をしっかり記載することはもちろん、手持ちの工作機械や工具で行える加工内容や手順、材質の選定が大切です。単に寸法を記載しただけでは情報が伝わりにくかったり誤解を招いたりすることもあります。基準面を明確に記したり、加工時に必要となる寸法を補足で記入したりするなどの工夫も大切です。
また、要求される最低限のスペックや検査の基準や方法について記載することで、品質不良を防ぐことができ、生産性の向上にもつながります。
板金加工の図面作りのポイント
板金加工においても図面作りのポイントがあります。切削加工の図面と同様、必要な情報をもれなく記載することと、作業者が作業をしやすいように、あるいは誤解しないようにする配慮をすることが前提です。特に板金の場合は曲げ元の膨らみを考慮して設計する必要があります。
板金図面はなるべく正面図にするとわかりやすくなります。板金加工では穴あけや外形カットを行う機会が多く、バリが発生することもあります。バリの処理や許容できる高さについても記載しておきましょう。穴の公差(誤差の許容範囲)についても記載しておく必要があります。
更に知っておきたいJIS規格
図面を作成することでものづくりに関わる人(依頼者と製作者)全員の共通認識を形成することができます。しかし、それが可能なのは図面の描き方が共通であることが前提です。人によって描き方や寸法などの記入の仕方が異なっていると、認識の違いが生じてしまいかねません。
そこで、日本ではJIS(日本工業規格製図通則)によって図面の描き方のルールが定められています。
図面の様式から線、文字、尺度などの表し方、公差の示し方、ねじの表し方まで、さまざまな規則があります。図面を描く際にはJISについても理解を深めておきましょう。
実際の依頼時はイメージ図でもOK?
図面が描けない、詳細な仕様や寸法が決まっていないなどの理由で図面がない場合もあるかと思います。金属加工や部品・パーツなどの生産を外注したい場合、図面は必要なのでしょうか?
結論から言えば問題ないケースも多いです。図面を描いてくれたり、イメージ図から図面を作成してくれたりする業者もあります。そうした業者に依頼すれば、手描きのざっくりとしたイメージ図でも問題ありません。
まずご相談されたい方は図面無しでもOKな弊社へご連絡ください
ものづくりに関わるのであれば、図面に関する知識は必須。ご自身で描けるようになるのがベストですが、少なくとも読めるようにはしておきたいです。まずは図面に触れる回数を増やして慣れるところからはじめましょう。
加工や生産を外注する際には図面が描けなくても問題はありません。実際に弊社でも多くのお客さまから図面がない状態から金属加工や部品・パーツ、ねじの生産をご依頼いただいております。設計から納品まで一貫して対応。お客さまが作成されたイメージ図や持ち込んでいただいた現物をもとに、図面を作成して形にします。
「こんなものを造りたいんだけど」というご相談も大歓迎です。ぜひ私たちにお任せください。
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