樹脂で作る試作品~ゼロから学ぶ樹脂試作の基本~

2022年07月27日(水)
2022年08月04日(木)

樹脂の試作とは?

本格的な製作の前に試しにつくる、試作。量産に対して、数を絞って作られるサンプルを指します。「モノづくり」での試作は大きな意味を持ちます。まずは試しに作る流れを経て、設計プロセスでは気づけなかった問題が見えるようになるからです。

加工法やコスト、納期やデザイン・素材などさまざまな面での課題を知ることができます。試作は、金属および合成樹脂をはじめとするプラスチック製品などの「モノづくり」では外せないフローとなっています。

逆に言えば、試作がなければ製造工法や工程などにおける課題に気づけません。課題をそのままに本格的な量産に入ってしまうと失敗のリスクも高まります。

そこで、モノづくりを行う上で重要な試作の流れと果たす役割について解説します。試作の種類や具体的な加工方法、スケジュールについてもお伝えしますのでぜひ参考にしてください。

【豆知識】そもそも試作品の目的は?

同一規格の製品を大量に作る過程(量産)の前に行うのが試作です。製品の強度など品質や機能面、素材選びなどに問題がないかを確認するために行います。また設計プロセスではわかりにくいのが実際の印象です。想定したイメージと違うなどのデザイン面を含めたミスマッチを防ぐためにも試作は欠かせません。

また試作で製品製作の一連の流れを理解できれば、製品化にどのくらいの時間がかかるかを把握することもできます。つまり試作は、量産に向けたテスト・検証の意味、現段階での製品評価を行う目的で行われると言えるでしょう。

試作対象から見るそれぞれの目的

試作を行う前に明確にしておきたいのは「詳細な目的」です。試作対象別に確認すべき内容が異なっています。まず部品の試作からスタートし、部品を組み付けるモジュールの試作を行います。最終的には製品段階での試作にまで進みます。

試作の対象となる部品、モジュール、製品の3種類ごとに目的をはっきりさせておきます。それぞれのステップでの確認ポイント、注意点などを詳しくご紹介します。

1)部品

製品は多様な部品を組み立てて作られます。ネジや歯車などの単品、さらには加工品を組み合わせた個別のユニット(電装や基板系のものなど)が該当します。試作によってそれぞれの状態や強度、寿命などを確認します。

試作の際の材料についても検討します。材料としては鉄やアルミなどの金属材料、樹脂、ゴムのような非金属材料、複合材料などが使われます。ほとんどの場合、製品に近い材料を用います。

2)モジュール

機器やシステムを機能させるためのまとまりが「モジュール」です。部品同士を組み立てたもので、製品の一部となります。モジュールでひとまとまりの機能を持っているものです。

自動車を例に取ると、さまざまな部品が組み合わされています。ドア部分に関する部品がまとまっているドアモジュール、冷却に関する部品がまとまっている部分を冷却モジュールとしています。

部品で構成されたモジュールがさらに組み合わさって1つの製品となるわけです。当然ですが、部品段階での試作が上手くいっていなければ、モジュール試作でも不具合の原因となります。

3)製品

ユーザーに販売する最終的な状態、製品段階での試作です。品質や機能をはじめ、デザイン面などの問題を確認します。量産化に向け、品質や工法・加工に問題がないかを今一度見極めます。

製品のうちの良品の割合(歩留まり)やそれぞれのユニットごとの性能も評価、確認します。試作で安全性、耐久性などを確認した後、最終的な完成品として販売を検討します。

試作で確認するポイント5つ!

試しに製品をつくってみると、多くの観点から問題や検討すべきポイントが見つかるものです。「試しにつくって終わり」では試作の本来の目的を果たしているとは言いがたいでしょう。また試作は一度で終わるのではなく、複数回繰り返される場合も少なくありません。実際の製品づくりに生かすべく、試作では以下の5つの項目を確認しておきましょう。

1)安全性

製品を作る過程、また実際に使う場合において安全性が担保されているかどうかは大きなポイントです。形状面での危険、使用時に発火などのリスクがないかなどを確認します。

想定した状況下できちんと機能するかどうかなど信頼性も安全性に担保されます。製品によっては必要な法規制、規格などに適しているかどうかにも注視します。場合によっては試作段階で材質や設計(デザイン)などの変更が必要になります。

2)品質

安全性と重なる部分でもありますが、想定された状況での使用で品質が保てるかも重要です。温度や湿度、気圧など環境や条件を変え、多岐にわたる検証を行います。製品によっては業界標準で試験方法が定められているものがあったり、規格が定められていたりするケースもあります。

ユーザーの操作性、顧客対応を行うエンジニア(フィールドエンジニア・サービスエンジニア)がメンテナンス可能かどうかもきちんと確かめておきます。

3)コスト

コストも大切な要素の1つです。製品が完成するまでに何にどれくらい費用がかかるのかを細かく検証します。設計にかかわる人数、組み立てに関わる人数と日数による人件費の見積もりも行いましょう。

また材質を含め生産数などを鑑みた部品コストなどが必要になります。また完成品の取扱説明書や付属品、梱包コストなどにも費用が生じます。

4)納期

量産する場合、どのくらいの納期が必要かも要確認事項です。資材の仕入れから組み立てなど実際の製品化までのスケジュールはどの程度かかるのかについて試作時点でチェックしておきます。

また製品化から販売を考えた場合、検査や輸送にかかる日程も計算に入れて納期を確認します。1日当たりの生産台数を綿密に検証し、納期を考慮した生産計画を立案することが大切です。

5)環境への影響

製品の製造、加工過程で環境にどの程度影響を及ぼしているのか、負荷がかかっていないかを見定めます。大気汚染や水質汚濁はもちろん、再利用できる素材がないかなども検証します。

リサイクルのしやすさは、分解の容易さも大きく影響します。試作によって、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に近づけられるような取り組みも考慮しておきましょう。

樹脂の試作の種類と納期

樹脂製品の試作をする場合、必ずしも量産と同じ方法を用いるわけではありません。量産する場合、コスト面や生産台数、また利益など資金計画などを鑑みて最適な加工方法を選ぶためです。一般的に金型を使うケースが多いですが、コストがかかります。試作である程度の形状を決めた後に使うのが合理的です。

プラスチック(樹脂)製品の試作では切削加工や真空注型、簡易金型の他、短納期には3Dプリンターなどが用いられます。

樹脂試作の加工方法と納期

樹脂製品の試作を行う際、優先する事柄で加工方法を選ぶことになります。作る製品の用途や数量、納期など必要な期間、製品精度など何を重視するかで適する加工方法が異なるためです。コストも関係してくるでしょう。それぞれの加工方法の特徴があり、メリットやデメリットもそれぞれ違います。

加工法のチョイス次第では使える材質や生産数、コストパフォーマンスにも差が生じてしまいます。試作に用いられる代表的な加工法を詳しく解説します。

金型を用いた工法

「金型の図」

樹脂製品の量産では、先にお伝えしたように金型を用います。一般的には耐久性の高い鋼材で作られた「本型」を用いた射出成形という方法で行います。本型は高精度の製品を量産するのに向いています。量産できれば製品1個あたりのコストは安価で、成形までの時間も短期間で済みます。一方で金型の作成や形状修正などが高額になってしまいます

そこで試作の場合は、簡易金型を用いて成形する方法もあります。銅材を使った本型ではなく、安価に作れるアルミ型や樹脂型、カセット型の簡易金型を使う方法です。本型と異なり、金型にかかる費用を抑え、金型製作や修正にかかる時間も少なくできます。簡易金型は耐久性に乏しいため、製品をつくる回数(ショット数)は本型よりも少ないというデメリットがあります。

切削加工

「切削加工の図」

材料を刃物で削って樹脂を加工する方法で、削り出しとも言います。工作機械である旋盤を用いた円柱状の加工やマシニングセンタで細かな調整や加工が可能です。高精度で強度のある製品を製作でき、量産時と同じような資材を使えます。

比較的製作時間がかかり、コストがかかるのがネックとなるでしょう。試作においてはさまざまな材料を試せ、既存の部品に加工できる点がメリットです。歯車や機構部品などのチェックにも向いている方法です。

3Dプリンター

「3Dプリンターの図」

積層法とも呼ばれ、3DCADデータをもとに薄く切られた2次元の層を積み重ねる方法です。積み重ねた層により立体的な像を作ることができます。3DCADデータがあれば作成可能なため、短納期で試作を完成させられるのが利点です。複雑な形状にも対応できます。デスクトップ上で作業を終えられ、材料費以外のコストダウンにもつなげられます。

一方でまだまだ開発途上にある技術で、試作に利用できる材料は限られているのがデメリットとなります。なお当社では3Dプリンターの取り扱いはございません。

樹脂試作の素材選び

特殊な素材を用いない限り、樹脂製品では試作に完成品と同じ素材を用います。金属製品の樹脂試作に関しては、使用環境や求められる機能、強度などを考慮し、最適な素材を選ばなくてはなりません。

プラスチック・樹脂といってもその種類は多岐にわたり、それぞれの特性により用途も異なります。金属製品での試作であれば、より細かな使用状況や機能を吟味し、試作の素材選びを行うことが鍵となります。

当社で成形加工可能な樹脂の種類は「樹脂・プラスチック材料一覧」でご紹介しています。名称や樹脂毎の特徴や長所、主に使用される部品の用途をわかりやすく記載しておりますのでぜひご覧ください。

試作に樹脂が選ばれる理由3選!~金属製品~

樹脂の種類はバラエティに富んでおり、適材適所の選択を行うことができます。金属のような性質が求められているシーンでも樹脂素材で対応可能です。また試作のように最終形状が決定していない場合は、低コストでスピーディな製品製作が求められます。

樹脂素材は金属よりも低コストで導入できるケースが少なくありません。試作に樹脂がチョイスされる代表的な3つの理由をお伝えします。

少数生産に対応

樹脂は試作や小ロットでの製作に向いています。金型の不要な切削加工など加工方法も豊富で、最小で高品質な試作製品を作れます。樹脂素材は複雑な形状の成型にも適しているのが特徴です。

樹脂への素材変換

金属に比べて軽量な樹脂は、形状などデザイン面でも自由度が高い素材です。なおかつ、加工についても大がかりな設備が必要でない場合も多く、コストパフォーマンスにも優れています。材料も安定的に供給できます。

一方で金属から転換する際、量産時に不具合が生じるリスクもあります。そういったトラブルを回避すべく、まずは試作を行うことが大切です。

樹脂への素材転換とは?

金属の鉄やステンレス、アルミなどの材料から樹脂へと素材を変える取り組みが注目されています。
強度や耐熱性の面から金属素材は長らく重宝されてきました。一方で樹脂は強度や耐熱性に乏しく、耐久性にも懸念がありました。

しかし近年、金属に変わる特性を持つ樹脂素材が多数登場しています。また加工技術の進歩もあり、金属が使われる場面でも樹脂素材が活用されはじめました。金属を樹脂に変える最大のメリットは軽量化です。航空機や自動車をはじめ、金属部品の樹脂化を進めて軽量化に成功しています。

コストダウン

加えて樹脂は金属よりも低コストで導入できるケースが多いのもメリットです。資材費がもともと安価な場合や部品の一体化、加工などの面でコストダウンが可能だからです。絶縁加工が必要な金属にたいし、樹脂素材の特徴である電気絶縁性を生かせます。部品そのものの簡素化が測れるのも経費削減につながる利点と言えます。

樹脂の試作を検討している方はフカサワまで!

「樹脂・プラスチック材料一覧」でご紹介したとおり、樹脂素材は一言では説明できないほど豊富な種類があります。素材によって特徴や耐熱・耐久性など品質、強度も異なりどのような使用が適しているのかもバラエティに富んでいます。

当社では第一に作りたい製品や予算、必要量や用途などまずはお客様のご要望をお聞きし、素材のご提案を行っています。試作には金属と樹脂どちらが適しているのか、樹脂の中でも何の素材がいいのかなど迷われる場合も多くあるかと思います。樹脂対応は可能かについてもアドバイスできますので、まずはフカサワまでお気軽にご相談、お問い合わせください。

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