樹脂に表面処理を行う目的
樹脂やプラスチックは加工後に表面処理を行うことがあります。その目的として挙げられるのが「加飾」です。表面処理を行うことで見た目が良くなる、加工の跡がわかりにくくなる、透明性が高くなる、光沢が増す、あるいは逆に光沢を消すことができるといったメリットが得られます。
表面がツルツルになっている樹脂製品や非常に透明度が高いガラスのような樹脂製品を目にされたことがあるかもしれません。表面処理技術があるからこそ、こうした見た目が良い樹脂製品を造り出すことができるのです。樹脂製の部品を製品と同色に統一する、あるいは別の色にすることで製品全体のデザイン性を向上させることも可能です。
他にも表面硬度や耐腐食性、耐熱性などの性能を向上させる、あるいは電気的性質(誘電性や電磁波シールド性)を付与する目的で表面処理を行う場合もあります。
このように、樹脂に表面処理を施すことでさまざまな付加価値を与えることができるのです。
樹脂に表面処理を施すケースを解説
樹脂やプラスチックの表面処理にはさまざまな方法があります。以下でそれぞれの処理方法の特徴や仕上がり、目的などを解説します。
塗装
樹脂の表面処理の中でも一番メジャーな処理方法と言っても過言ではありません。塗装を行うことで、加工跡を隠すことができる、見た目が美しくなる、艶を出す・消すことができる、メタリック感を演出することができるなど、樹脂部品や製品にさまざまなアレンジを加えることができます。また、耐候性を向上させる目的で塗装が行われることもあります。
塗料を塗ってから熱を加えて乾燥させます。しかし、樹脂は金属よりも低温で溶解してしまいますので、80℃くらいまでの比較的低い温度で乾燥させる必要があります。塗装が用いられている製品例としてプラモデルやおもちゃなどが挙げられます。
バフ仕上げ
バフとは円盤に布や綿素材、フェルトを重ねて貼り合わせた、樹脂の表面を研磨する道具のことを指します。研磨剤を加えて高速回転させ、対象物を当てることで研磨することができます。樹脂部品の加工の跡を目立ちにくくする、表面の凹凸を除去する、光沢を加えるなどの目的で行われます。ただし、あくまで見た目を良くするのが目的であるため、バフ仕上げで研磨をしても精度が向上するわけではないことに注意が必要です。
バフ仕上げを行った樹脂は表面がつるつるした肌触りになり、自然な光沢が現れます。透明なアクリルスタンドが製品例として挙げられます。
鏡面仕上げ
鏡面仕上げとは、その名のとおり鏡のように光を反射するほどの光沢が出る表面処理技術のことを指します。前述のバフ仕上げでも樹脂部品や製品に光沢をもたせることができるのですが、鏡面仕上げではさらに艶が強くなります。透明度を高める、高級感を演出するという目的で行われることが多いです。
微細粒子の研磨剤を用いて研磨する、ダイヤカッターで表面を研磨するといった方法で鏡面仕上げを行うことができます。また、一般的に鏡面仕上げは算術平均粗さRaが0.2以下であるため、加工精度を向上させる目的でも行われます。
仕上がり面は鏡やガラスのような光沢があり、透明度も高く、一瞬見ただけではプラスチックだとわからないレベルです。鏡面仕上げが施されている製品例として車のヘッドランプや加飾パーツなどが挙げられます。
蒸着処理
高温で気化させた溶剤を樹脂素材に付着させることで表面をわずかに溶かして仕上げる方法です。また、同じように気化した金属を覆うことで光沢を出す手法に関しても蒸着処理と呼ばれます(真空蒸着加工とも言われます)。バフ仕上げや鏡面仕上げよりも効率的に表面処理ができるというメリットがあります。
樹脂素材に光沢をもたせる目的で行われるほか、表面をコーティングすることで耐腐食性や耐候性といった性能を向上させることができるのもメリットです。蒸着処理が用いられている製品例として車の装飾部品や化粧品の容器などが挙げられます。
装飾用メッキ
プラスチックメッキとも呼ばれます。電気めっきによって銅やニッケルなどの金属で樹脂の表面を覆います。樹脂にゴールドやシルバー、クロム、ガンメタリックなどの色をつける、あるいは削り出しや光沢などの金属感を演出することができます。また、部品や製品の耐久性や強度アップにもつながります。金属ではなくメッキを施した樹脂部品を採用することで軽量化やコストダウンといったメリットがあります。
仕上がりは金属のような輝きがあり、こちらもひと目でプラスチックだとわからないレベルです。製品例としてアクセサリーや自動車の装飾モールなどが挙げられます。
表面処理における金属と樹脂の違い
金属も樹脂と同じように表面処理という工程があります。樹脂の表面処理は意匠性や性能の向上を目的に行われますが、金属も同様です。特に鉄や鋼といった素材は錆が発生するため表面処理を施して防錆する必要があります。また、金属の場合は表面処理の種類も豊富で、耐熱性や硬度、耐摩耗性といった各種性能を大幅に向上することができます。一方で樹脂は金属と比較すると融点が低く、できる表面処理も限られているので、得られる効果も限定的にならざるを得ません。金属は性能アップ、樹脂やプラスチックは意匠性など付加価値アップが表面処理の主な目的と言えます。
樹脂の表面処理について疑問点をお持ちの方、お悩みの方はフカサワにご相談ください。
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