金属加工を行う上で、融点と沸点を把握しておくことは非常に重要です。金属素材には鉄、アルミ、銅、ニッケルなどさまざまな種類があり、それぞれ融点・沸点が異なります。
今回は1気圧の条件下での「金属の融点・沸点にまつわる基礎知識」をプロの視点で解説します。素材ごとの一覧表もつけておりますので、ぜひご活用ください。
金属ごとに融点が異なる理由
金属素材ごとに融点や沸点が異なります。それを左右するのは「イオン価数」です。イオン価数が多ければ多いほど融点や沸点が高くなります。言い換えればイオン間の距離が小さければ小さいほど融点や沸点が高くなると言えます。
特に遷移金属(元素表の3族から11族までの金属元素。鉄や銅、ニッケル、コバルトなど)は融点や沸点が高くなります。これは原子がもつ電子が密集し強固に結合しているためです。水あるいは酸素や二酸化炭素といった物質よりも金属のほうが遥かに溶けにくい・沸騰しにくいのは、こうしたメカニズムがあるからです。
【豆知識】そもそも元素って何?
元素については理科の授業で勉強されたかと思いますが、もう一度おさらいしてみましょう。元素とは1種類だけの原子から作られた物質あるいはその単体の構成要素のことを指します。たとえば水は水素原子と酸素原子が結合して作られます。水は水素と酸素に分けることができますが、水素も酸素もこれ以上分けることはできません。鋼は鉄と炭素という元素からできており、ステンレスは鉄とニッケル、クロムという元素でできています。
元素は世の中のあらゆる物質の根源であり、言い換えればこれ以上分割できないものが元素と呼ばれます。特にその中でも個体の状態で金属光沢という特有の光沢を持つものを、今回の主題である「金属」と呼びます。
融点と沸点の違い
融点とは固体が液体に変わる融解という現象が起きる温度のこと。沸点は液体が気体に変化する沸騰が起きる温度のことです。氷(固体)が溶けて水(液体)に変化する融点は0℃、水が沸騰して水蒸気(気体)に変化する温度は100℃です。ここからは金属加工において融点と沸点の重要性についてご説明します。
融点が重要である理由と有益性
加工のしやすさの話
融点が重要な理由は加工のしやすさです。当然のことながら融点が低い金属ほど低温でも融解しやすくなります。たとえば鉄の融点は1500℃ほどですが、アルミは660℃であり、鉄ほど加熱する必要がありません。特に溶解した金属を型に流し込んで形作る鋳造に関しては鉄よりもアルミのほうが低温で加工しやすいと言えます。
沸点が重要である理由と有益性
薄膜の話
沸点が関連するのは薄膜です。たとえばCDやDVDの反射膜、梱包材のフィルム、半導体などにはアルミを気化させたときにできる薄膜が蒸着されます。薄膜を作る際には沸点を把握しておかなければいけません。ちなみに、通常アルミの沸点は2470℃と非常に高温ですが、真空状態では700℃まで下がるため、真空中でアルミを気化させて薄膜を作る技術がよく使われています。
【金属元素別】融点・沸点一覧
前述のとおり、金属素材もっと言えば元素ごとに融点と沸点は異なります。一覧表形式で金属元素ごとに沸点と融点をまとめましたので、ぜひご活用ください。
金属元素 | 融点 | 沸点 |
---|---|---|
亜鉛 (Zn) | 419.58 ℃ | 907 ℃ |
アルミニウム (Al) | 660 ℃ | 2520 ℃ |
アンチモン (Sb) | 630.74 ℃ | 1587 ℃ |
イッテルビウム (Yb) | 824 ℃ | 1196 ℃ |
イットリウム (Y) | 1520 ℃ | 3388 ℃ |
イリジウム (Ir) | 2443 ℃ | 4437 ℃ |
インジウム (In) | 156.61 ℃ | 2072 ℃ |
ウラン (U) | 1132 ℃ | 4172 ℃ |
エルビウム (Er) | 1529 ℃ | 2868 ℃ |
オスミウム (Os) | 3045 ℃ | 5012 ℃ |
カドミウム (Cd) | 321 ℃ | 767 ℃ |
ガドリニウム (Gd) | 1312 ℃ | 3266 ℃ |
カリウム (K) | 63.65 ℃ | 765 ℃ |
ガリウム (Ga) | 29.78 ℃ | 2208 ℃ |
カルシウム (Ca) | 842 ℃ | 1503 ℃ |
金 (Au) | 1064.43 ℃ | 2857 ℃ |
銀 (Ag) | 961.93 ℃ | 2162 ℃ |
クロム (Cr) | 1857 ℃ | 2682 ℃ |
ゲルマニウム (Ge) | 937.4 ℃ | 2834 ℃ |
コバルト (Co) | 1495 ℃ | 2930 ℃ |
サマリウム (Sm) | 1072 ℃ | 1791 ℃ |
ジスプロシウム (Dy) | 1407 ℃ | 2562 ℃ |
ジルコニウム (Zr) | 1852 ℃ | 4361 ℃ |
水銀 (Hg) | -38.842 ℃ | 356.58 ℃ |
スズ (Sn) | 231.96 ℃ | 2603 ℃ |
スカンジウム (Sc) | 1539 ℃ | 2831 ℃ |
ストロンチウム (Sr) | 777 ℃ | 1414 ℃ |
セシウム (Cs) | 28.4 ℃ | 658 ℃ |
セリウム (Ce) | 799 ℃ | 3426 ℃ |
セレン (Se) | 220.2 ℃ | 684.9 ℃ |
タリウム (Tl) | 303.5 ℃ | 1473 ℃ |
タングステン (W) | 3407 ℃ | 5555 ℃ |
タンタル (Ta) | 2985 ℃ | 5510 ℃ |
チタン (Ti) | 1666 ℃ | 3289 ℃ |
ツリウム (Tm) | 1545 ℃ | 1950 ℃ |
テクネチウム (Tc) | 2157 ℃ | 4265 ℃ |
鉄 (Fe) | 1536 ℃ | 2863 ℃ |
テルビウム (Tb) | 1356 ℃ | 3230 ℃ |
テルル (Te) | 449.8 ℃ | 991 ℃ |
銅 (Cu) | 1084.5 ℃ | 2571 ℃ |
トリウム (Th) | 1750 ℃ | 4789 ℃ |
ナトリウム (Na) | 97.81 ℃ | 883 ℃ |
鉛 (Pb) | 327.5 ℃ | 1750 ℃ |
ニオブ (Nb) | 2477 ℃ | 4744 ℃ |
ニッケル (Ni) | 1455 ℃ | 2890 ℃ |
ネオジウム (Pr) | 1024 ℃ | 3074 ℃ |
白金 (Pt) | 1769 ℃ | 3827 ℃ |
バナジウム (V) | 1917 ℃ | 3420 ℃ |
ハフニウム (Hf) | 2233 ℃ | 4603 ℃ |
パラジウム (Pd) | 1552 ℃ | 2964 ℃ |
バリウム (Ba) | 729 ℃ | 1898 ℃ |
ビスマス (Bi) | 271.4 ℃ | 1561 ℃ |
ヒ素 (As) | 817 ℃ | 603 ℃ |
プラセオジム (Pr) | 935 ℃ | 3520 ℃ |
プルトニウム (Pu) | 639.5 ℃ | 3231 ℃ |
プロメチウム (Pm) | 1042 ℃ | 3000 ℃ |
ベリリウム (Be) | 1287 ℃ | 2472 ℃ |
ホルミウム (Ho) | 1461 ℃ | 2720 ℃ |
ポロニウム (Po) | 254 ℃ | 962 ℃ |
マグネシウム (Mg) | 650 ℃ | 1095 ℃ |
マンガン (Mn) | 1246 ℃ | 2062 ℃ |
モリブデン (Mo) | 2623 ℃ | 4682 ℃ |
ユウロピウム (Eu) | 826 ℃ | 1529 ℃ |
ラジウム (Ra) | 700 ℃ | 1140 ℃ |
ラドン (Rn) | -71 ℃ | -61.8 ℃ |
ランタン (La) | 920 ℃ | 3461 ℃ |
リチウム (Li) | 180.54 ℃ | 1347 ℃ |
ルテチウム (Lu) | 1652 ℃ | 3402 ℃ |
ルテニウム (Ru) | 2250 ℃ | 4155 ℃ |
ルビジウム (Rb) | 38.89 ℃ | 688 ℃ |
レニウム (Re) | 3180 ℃ | 5596 ℃ |
ロジウム (Rh) | 1960 ℃ | 3697 ℃ |
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