金属加工の方法はどのようなものがある?基礎の基礎からお伝えします!
金属加工には多種多様な方法があり、非常に奥深いものです。また、金属製品はどれか一つの加工を行ったら完成というものではありません。原料から製品が出来上がるまで、さまざまな加工を施します。
今回は製品になるまでの工程でどのような加工があるのか、順を追ってわかりやすくご説明します。また、少しマニアックな金属加工の世界についてもご紹介します。
金属から製品が出来るまでの流れ
金属の原料の状態から製品になるまでは、主に「金属の原料から素材を作る」「素材を材料へと加工する」「材料を製品に加工する」という3つの工程があり、それぞれで必要な加工を施します。順を追って詳しく見ていきましょう。
金属の原料から素材を作る
原料とは物を製造するもとになる材料のことを指します。たとえばパンを作る場合は小麦粉を材料として使いますが、そのためにはまず小麦粉を原料である小麦から作らなければいけません。
金属加工も同じです。まずは原料となる鉱石あるいはスクラップから素材を作り出す必要があります。この工程では主に「鋳造」や「粉末冶金」という加工方法が採用されています。
・鋳造とは
鋳造とは溶かした金属原料を鋳型と呼ばれる型に流し込んで冷却する方法です。四角形をした製氷皿に水を入れて冷凍庫に入れるとやがて四角形の氷ができますが、それと同じような原理です。
鋳造で造られた金属の塊は「インゴット」と呼ばれ、これを加工して製品を形作ります。また、鋳造の段階で製品をある程度形造ることも可能です。たとえばお寺の鐘は鐘の形をした鋳型に金属を流し込むことで、あの独特な形状を形造ることができます。
・粉末冶金とは
粉末冶金(ふんまつやきん)はその名の通り粉末にした金属を加工する方法です。原料を金型に入れてプレス機で圧縮しながら焼き固めることで、素材を造り出すことができます。
粉末冶金で形作られた素材は非常に強度が高く、モリブデンやタングステンといった融点が高い(=熱を加えても溶けにくい)金属についても素材を造り出すことが可能です。
素材を元に材料に加工
金属の素材を作り出したら、次はそれを「材料」にして加工しなければなりません。材料とは加工して製品にするもととなるものを指します。パン作りで言えば小麦粉から作られた生地がこれにあたります。
素材の状態になった金属は「ビレット」「ブルーム」「スラブ」と呼ばれる材料に加工されます。それぞれの特徴について見ていきましょう。
・円柱形の材料として良く用いられるビレットの特徴
ビレットとは断面が正方形ややや長方形あるいは円柱状になっている金属の塊のことです。鋳造で出来上がったインゴットを適当な大きさにカットしたもの、だいたい一辺が50~130mmで、長さ1mほどのものをビレットと呼びます。
ビレットをさらに加工して小型条鋼や線材、帯鋼などに加工しますが、特に円柱形の部品やパーツ、製品を造るときに用いられるケースが多いです。
・大きめの材料として用いられるブルームの特徴
ブルームはビレットよりも一回り大きい材料のことを指します。断面はほぼ正方形になっていて、一辺の大きさは150mm~300mmです。このブルームを、分塊圧延機を用いて圧延(押しつぶして延ばす)ことで、先ほどご紹介したビレットを造ります。
ブルームから形鋼、棒鋼、線材、継目無鋼管などを生産することができます。ビレットよりも大型の部品やパーツを造ることが可能です。
・長方形で大きめの加工で用いられやすいスラブの特徴
スラブとは板状もしくは断面が長方形になっている材料のことを指します。厚みは50mm以上で幅はその2倍以上です。ブルームよりもさらに大きめの物を生産する際に使われます。
また、その形状から鋼板を造る際にも使われます。圧延機によって圧力をかけることで、薄い金属の板を造ることが可能です。
完成を見越した更なる加工
素材が完成したら製品を形造る加工を施します。パン作りでは生地をちぎったり、丸めたり、形や大きさを整えたりし、それを焼き上げて完成です。やはり金属加工も同様に、素材を曲げたり切断したり、削ったりし、さらに熱を加えて変性させることで、はじめて製品が出来上がります。
完成を見越した加工にはさまざまな種類があります。以下で主なものを見ていきましょう。
・曲げやせん断、プレス加工が含まれる塑性加工
塑性(そせい)加工とは金属に力を加えて変形させながら加工する方法です。ハンマーやパンチ、プレス機で金属を曲げたりせん断したりする、叩いて成形する加工がこれに該当します。
たとえば、刀鍛冶は鉄の塊をハンマーで叩くことで日本刀を造ります。これは鍛造という塑性加工の中でも代表的なものに分類されます。現代でも鍛造はさまざまな金属製品の製造で用いられる技術です。
前述のとおり、スラブを圧延機で延ばせば薄い金属板を造ることができます。これも塑性加工の一種です。
塑性加工は材料のロスが少ない、加工が早くできる、機械的な性質を高めることができる(金属を圧縮する鍛造など)といったメリットがあり、特に大量生産に向いています。
・切削、研削などの除去加工
素材の不要な部分をカットする、削り取る、磨くといった加工で製品を形作っていくことを除去加工と言います。
刃物やドリルで金属を切断したり削ったりする「切削加工」、砥石を使って金属を削る「研削加工」、砥石や砥粒で表面を磨く「研磨加工」、レーザーや電気、水の力で金属を切断したり削ったりする「特殊加工」など、さまざまな種類があります。いずれも共通するのは力を加えて変形させるのではなく、金属の一部を除去するということです。
除去加工は複雑な形状に加工することが可能で、表面の加工精度を高められるのがメリットです。少量品や精度が求められる部品・パーツの生産などに向いています。
・金属の特性を変化させる熱加工
熱加工とは金属を熱して冷却することで変質させる加工のことです。パン生地の生地を作ってもそのままでは食べられません。焼き上げることで食べごたえがあるおいしいパンになります。金属に関しても熱加工を施すことで、耐久性や耐腐食性(サビにくさ)、耐摩耗性などの機械的性質が向上し、安心して使えるようになります。
金属を加熱した後に急速に冷却することで硬度が増す「焼入れ」、焼入れされた金属を再加熱して粘り強さを与え同時にひずみを除去する「焼戻し」、一定期間加熱した後にゆっくりと冷却することで金属が柔らかくなる「焼きなまし」、金属を加熱した後に空気中で冷却して金属の組織を整える「焼ならし」など、熱処理にもさまざまな種類があります。
・更に細かくみる金属加工の世界
以上でご紹介したものが主な金属加工の方法です。しかし、上記以外にもさまざまな加工があります。部品やパーツ、製品の用途によっては以下のような加工も行うことがあります。
ここからは少しマニアックな金属加工の世界を見ていきましょう。
実は奥深いメッキの世界
熱処理をした後に金属の表面に皮膜を作る「表面処理」を施すことがあります。特によく知られているのがメッキです。
メッキとは金属あるいは非金属(プラスチックなど)の表面を金や銀、ニッケル、クロムなどの金属の薄い被膜で覆う技術のことを指します。金属加工に携わっていない方でも、メッキという言葉は聞いたことがあるかもしれません。メッキ処理を行うことで、以下のようなメリットが得られます。
・機能性の付与
前述のとおり、メッキ処理で金属を表面にコーティングすることです。それによって電気的特性(電気の伝わりやすさ)や熱的性質(熱の通しやすさ)などの機能性を物質に与えることができるようになります。特に電子部品などでは性質を変化させる目的でメッキが施されることがあります。
・耐食性の付与
金属の弱点は腐食(サビ)が発生することです。特に鉄は錆びやすく、表面処理を行わないと表面はもちろん、内部までどんどん腐食してもろくなってしまいます。
そこで腐食しにくい金属を使ったメッキを処理することで、材料となっている金属の良さはそのままに、サビに強い製品を造ることができるようになります。特に屋外で使われる金属製品は耐腐食性を向上させるためにメッキ処理が行われることが多いです。
・装飾性の付与
見た目の良さを目的にメッキ処理を行うこともあります。代表的なのは金メッキや銀メッキです。鉄やステンレス、アルミなどの表面にメッキを施すことで、高級感の演出が可能です。また、プラスチックや陶器などでできた部品やパーツにもメッキを施すことで金属っぽさや上質感を与えることができます。
アクセサリやインテリア、車の内外装部品など、さまざまな箇所で使われています。
まるで鏡のような仕上がりを実現する研磨加工の世界
研磨加工は砥石や砥粒で金属の表面を加工する方法であることは先ほどご説明したとおりです。一般的に製品を形造る目的で行われますが、見た目を美しくする目的で行われることもあります。
特に光沢があって鏡のように自分の顔やまわりの風景が映り込むようなレベルにまで金属を磨き上げる加工のことを鏡面研磨と言います。
研磨加工のメリット
研磨加工のメリットとしてまず挙げられるのが、見た目が良くなるという点です。研磨された金属はまばゆいばかりの光沢を放ち、高級感があります。他にも表面の凹凸がなくなることで精度が高くなる、摺動性(滑りやすさ)や耐摩耗性、耐腐食性が向上する、汚れが付着しにくく汚れを落としやすくなるといった、さまざまなメリットを得ることが可能です。
見た目を良くするのはもちろん、性能をアップさせるという意味で金属の最終仕上げとして研磨加工が行われます。
研磨方法
研磨加工には「固定砥粒」と「遊離(自由)砥粒」という2つの方法があります。固定砥粒は砥石もしくは砥粒が工具に接着されているものを用いる方法です。回転・摺動している砥石もしくは砥粒を金属の表面に押し当てながら磨いていきます。
遊離(自由)砥粒とは砥粒が含まれる薬剤(研磨剤)を用いた研磨方法です。布やバフ、バレルなどを用いて研磨剤で工作物を磨いていきます。
金属加工についてお悩みがあれば何でもお聞かせください
金属加工にはいくつかの段階があり、それぞれの工程で適した加工方法を選択する必要があります。これが非常に難しいです。「どんな製品を造りたいのか」「材質は何を使うか」「精度やスペックはどれくらい要求されるか」など、さまざまな事柄を考慮して最適な加工方法を選ばなければなりません。これを間違えると不良品が出る、製品の性能が十分に発揮されない、コストがかかる、生産性が低下するなど、多くの弊害が生じるリスクがあります。
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