アルミニウム(アルミ)は私たちにとって身近な金属のうちの一つであり、アルミ製品を見かける機会もよくありますが、これだけ使われるのには理由があるのです。
今回はアルミニウムの特徴やアルミニウムを部品や製品の素材として使うメリットについて解説します。またアルミニウムが単体だけで使われることはまれです。多くの場合、他の金属を混合させた「合金」が使われます。代表的なアルミニウム合金の特徴についても解説します。
アルミニウムの基本と特徴
アルミニウムの原料はボーキサイトという赤褐色の鉱石です。この中に含まれている酸化アルミニウムを取り出し、さらにそれを電気分解することでアルミニウムを抽出することができます。
今や私たちの生活とは切っても切れない関係にあるアルミニウムですが、発見されたのは1825年と比較的最近です。歴史が浅いのにも関わらずこれだけ普及した理由はアルミニウムの特性にあります。比重が軽い上、通電性や熱伝導率、耐食性、非磁性が高いため、非常に使い勝手がいいのです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
アルミニウムの性能一覧 | |
---|---|
比重の軽さ | 2.7(鉄や銅の1/3程度) |
通電性 | 銅の60%程度 |
熱伝導率 | 226(鉄の三倍以上) |
耐食性 | 非常に高い |
非磁性 | 非常に高い |
比重の軽さ
比重とはある物質の密度と基準となる標準物質の密度との比です。比重が大きければ大きいほど、重量も重くなります。標準物質である水の比重は1.0であり、鉄の比重は7.8、銅は8.9と非常に重いです。
一方、アルミニウムの比重は2.7。鉄や銅の1/3程度で、金属でありながらも非常に軽いです。そのため部品の軽量化や性能アップ(作動効率や燃料効率の向上など)を目的に素材として採用されるケースも多いです。
通電性
通電性とは電気の通しやすさのことです。電気を通しやすい金属としては銅が知られています。電気ケーブルには銅線が使われていますが、これは銅の通電性が非常に優れているからにほかなりません。
アルミニウム自体は銅ほど通電性が高いわけではありませんが、比重が銅よりも低いため、同じ重さの銅とアルミニウムがあった場合、2倍の電流を流すことが可能です。電気・電子関係の部品の素材としてもよく使われます。
熱伝導率
熱伝導率とは熱の通しやすさを指します。そもそも金属自体が木や樹脂、ガラスなどと比べると熱を通しやすい物質なのですが、とりわけアルミニウムの熱伝導率は226と非常に高く、鉄(熱伝導率:84)の3倍以上です。ちなみにガラスの熱伝導率は1、木は0.15、発泡ポリスチレンは0.03です。
つまり熱しやすく冷めやすい性質を持っているため、熱が発生する箇所の放熱部品などに使われることもあります。
耐食性
耐食性とは腐食(錆)に耐えられる性質のことです。耐食性が高ければ高いほど錆びにくいということになります。特に鉄は何も処理しないと時間が経過すると錆びてボロボロになってしまいます。
アルミニウムは空気中で酸化皮膜を形成するため、耐食性が非常に高く錆びにくいです。そのため屋外や水がかかる箇所など、過酷な環境下で使われる部品の素材としてもよく用いられます。ちなみにステンレスも錆びにくい金属としてよく知られていますが、やはり同様に空気中で酸化皮膜を形成するという特徴があります。
非磁性
非磁性とは磁気を帯びにくい性質のことです。鉄は非磁性が低いため磁石を近づけたら引きつけられますが、アルミは非磁性が高いため磁石を近づけてもくっつくことはありません。医療機器や電子機器などに使われるケースがあります。
実際に加工されているアルミニウム合金
以上のような性質があることからさまざまな用途で使われるアルミニウムですが、それ単体で使われることはほとんどありません。
アルミニウムは非常にやわらかい金属で強度が低いという弱点があるため、他の金属と混ぜ合わせた「アルミニウム合金」が素材として使われるケースが多いです。また、合金にすることでアルミニウムがもともともつ性質をさらにアップさせることもできます。
ここからはアルミニウム合金の種類や特徴について見ていきましょう。ちなみにアルミニウム合金は「A●●(番号)」のように表記されます。
A2017(アルミニウム+銅)の特徴
A2017はいわゆる「ジュラルミン」と呼ばれる合金です。アルミニウムに銅を加えることで強度が増す、切削性が高くなるといった特性が加わります。特にA2017は熱処理を施しているため、銅や鉄鋼と遜色ない強度を持ち合わせていて、過酷な環境下や大きな負荷がかかる部品に使われることが多いです。
一方で溶融溶接性は低いので溶接などには向いていません。また、耐腐食性は他のアルミニウム合金と比較すると低い傾向があるため錆には注意が必要です。
A3003 (アルミニウム+マンガン)の特徴
マンガンは鉄よりも硬い金属で、強度が非常に高いです。アルミニウムにマンガンを添加することで、アルミニウムがもつ耐食性をそのままに、弱点である強度を増すことができます。加工性や成形性、溶接性も高く、加工がしやすいのもメリットです。
さらに強度を高めるために、A3003にマグネシウムを加えることもあります。
A5052 (アルミニウム+マグネシウム)の特徴
マグネシウムは比重に対して強度や剛性が非常に高い性質があるため、アルミニウムにマグネシウムを加えることで、強度を高めることができます。加工性や溶接性も高く、部品の素材としてよく使われている合金です。もちろん耐食性も高く、錆びにくい性質があります。
熱処理をしないアルミ合金の中では、強度が非常に高いです。
加工する上での特徴
軽量である、錆が発生しにくい、電気や熱を通しやすい、磁気を帯びにくいなどの特性があるため用途が広く、さまざまな製品・部品に使われるアルミニウムですが、よく使われる理由はこれだけではありません。
塑性加工や切削加工がしやすく、接合方法もさまざまあるため、加工する側にとっても非常に使い勝手が良いのです。
塑性加工がしやすい
塑性加工とは力を加えて金属を曲げたり引き伸ばしたり変形させることで製品を形造る加工方法です。アルミニウムは非常にやわらかい金属であるため、塑性加工がしやすく、さまざまな形状にすることができます。複雑な形状を形造ることも可能です。また、圧力を加えて成形する鍛造加工にも対応しています。
切削加工がしやすい
切削加工とは金属を切断したり削ったり磨いたりする加工のことを指します。塑性加工以上に自由度が高く、複雑な形状を形造ることが可能です。アルミニウム、特に合金の場合は加工性が高いです。
アルミニウムは前述のとおり熱伝導性が非常に高いです。普通の金属は加工することで熱が生して歪が生じる、工具が破損しやすくなるなどの問題が発生しますが、アルミニウムは熱が逃げやすいため、これらの問題が発生しにくいというメリットもあります。
接合方法が多彩
金属同士は接合することができます。特にアルミニウムは溶融溶接性が高いため、釘のような部品で金属同士を接合するリベット接合、接着剤で金属同士をつなぎ合わせる接着接合、溶かした金属を接合部に加えることで金属同士を接合する溶接など、さまざまな方法で接合することが可能です。
金属を接合することで、上記の塑性加工や切削加工では実現できない形状も形造ることができます。
アルミ加工で信頼の置ける技術を持った業者をお探しならご相談ください!
アルミニウムはさまざまな性質を持ち合わせているため、幅広い用途に使うことができます。加工性も高いため、加工する側にとってもアルミニウムを選択するメリットは大きいです。これが、アルミニウムが実用化された歴史が比較的浅いにも関わらず、今や私たちの身近な金属の一つとなっている理由と言えます。部品やパーツの素材として金属を採用する際は、まずはアルミでできないか?を検討する価値はあります。
アルミニウムやアルミニウム合金の加工を外注したい、部品やパーツの製作を検討されているなら、株式会社フカサワにご相談ください。弊社は創業80年以上の金属加工のプロフェッショナルであり、さまざまな協力会社と提携して部品・パーツ、ねじを安定的に供給しております。もちろんアルミニウム・アルミニウム合金の加工も対応可能です。
ただ単に物を納めるのではなく、生産性の向上やコスト削減、製品の性能アップが実現できるようなご提案もさせていただきます。特に既存の部品・パーツをアルミニウムに置き換えることで、加工コストの削減や軽量化など、さまざまな課題解決ができます。
アルミ加工やアルミ部品・パーツのことなら、株式会社フカサワにお任せください。
«前へ「金属加工の図面はどのように作られている?基礎の基礎から徹底解説」 | 「樹脂の種類と成形方法!~適した方法で樹脂成形するために~」次へ»