私たちの身の回りのさまざまな製品や部品・パーツに使われているプラスチックは樹脂とも呼ばれます。「プラスチックと樹脂ってどう違うの?」と思われたことはありませんか?両者にはどのような違いがあるのでしょうか?そもそも樹脂(プラスチック)とはどのような素材なのでしょうか?
今回は樹脂の種類や部品・パーツ・製品の素材として樹脂を使うメリット・デメリットについてご説明します。
樹脂とプラスチックの違い
日本工業規格(JIS)では樹脂を「不明確でかつしばしば高い相対分子質量を有し、応力を受けると流動する傾向を示し、通常は軟化又は溶融範囲を有し、かつ通常は貝殻状に割れる固体、半固体、又は凝固体の有機材料。広義にはこの用語はプラスチック用の基盤材料であるいくつかの重合体を明示するためにも使用される。」と定義しています。
一方で、プラスチックは「必須の構成成分として高重合体を含み、かつ完成製品への加工のある段階で流れによって形を与え得る材料。」と定義されています。
端的に言うと樹脂は原料であり、プラスチックは樹脂から造られた成形品のことを指します。カカオを加工すればチョコレートという製品が出来上がり、食べられる状態になります。樹脂はカカオ、プラスチックはチョコレートと考えるとわかりやすいかもしれません。
ちなみに樹脂の語源はその字の通り樹木のヤニ(脂)です。もともと樹脂は樹木の脂を固めて造られていました。プラスチックの語源はギリシャ語の「plastikos(可塑性のある)」とされています。
そもそも樹脂とは?
樹脂と一口に言ってもさまざまな種類があります。まずは天然由来の成分を使った「天然樹脂」と、人工的に合成した「合成樹脂」という大きな分類があります。ちなみにプラスチックはほとんど合成樹脂から造られているので、プラスチックも合成樹脂に分類しました。
天然樹脂は「植物性」「動物性」、合成樹脂は「熱可塑性樹脂」「熱硬化性樹脂」という区分があります。熱可塑性樹脂には「汎用プラスチック」と「エンジニアリングプラスチック」という分類があり、さらにエンジニアリングプラスチックには「スーパーエンプラ」「汎用エンプラ」があります。
かなりややこしく感じられるかもしれませんが、樹脂を素材として使うためにはそれぞれの特徴を押さえておく必要があります。ここからはそれぞれについて詳しくご説明していきますので、ぜひ各樹脂素材に対して理解を深めましょう。
天然樹脂〜植物性と動物性〜
前述のとおり、もともと樹脂とは読んで字のごとく樹木のヤニを固めたものを指す言葉です。他にも昆虫や動物から樹脂が得られます。このような天然由来の成分から造られた樹脂のことを天然樹脂と言います。
植物性樹脂
植物性樹脂とは樹木のヤニを集めて固めたものを指します。松や漆、琥珀、ゴムの木から採れるものが有名です。
木も人間と同じように、生命維持のために樹脂酸やアルコールが含まれた脂(ヤニ)を蓄える性質があります。木を刃物などで傷つけると、やがてそこからヤニが出てきて酸化、重合、分解などの作用が働いて固くなるのです。木の切り株や天然木を使った外壁や建具、家具からヤニが出てきて固まっているのを見たことがあるかもしれませんが、あれが天然の樹脂と言えます。
現代では合成樹脂が主流となり植物性樹脂が使われる機会は少ないですが、松ヤニは弦楽器の弓の部分の塗布剤、漆ヤニは伝統工芸品の塗料や接着剤として、琥珀は宝石やアクセサリーに、ゴムの木はゴム製品として使われています。
動物性樹脂
動物から採れる樹脂は動物性樹脂と呼ばれます。昆虫の分泌物や動物の骨、皮などに含まれる成分を集めて生成することが可能です。こちらもやはり合成樹脂と比較すると使われる機会は少ないと言えます。
昆虫の分泌物を集めたシェラック、動物の骨や皮に含まれる膠(ゼラチン)、ウミガメの甲羅から採れるべっ甲、牛乳に含まれるカゼインなどが有名です。シェラックは塗料やインク、合成剤として、ゼラチンはお菓子や医薬品、接着剤の原料として、べっ甲は工芸品やアクセサリーに、カゼインはボタンや印鑑などに使われています。
合成樹脂〜熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂〜
本来、樹脂は上記のような天然由来の成分から造られたものを指します。しかしながら、天然樹脂を生成し、それを一般的に普及している製品や部品の素材として使うのは容易なことではありません。そこで、石油や石炭、天然ガスに含まれる成分を代替して樹脂素材が造られるようになりました。これを合成樹脂と言います。
合成樹脂は大きく分けて熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に大分されます。ここからはそれぞれの特徴について見ていきましょう。各素材の特徴については「樹脂・プラスチック材料一覧」でもご説明していますので、詳しく知りたいからはぜひこちらもお読みください。
熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂とは加熱すると柔らかくなり、冷却すると硬くなる性質がある樹脂のことを指します。一度固まっても再度加熱すると柔らかくなります。加熱すると柔らかくなり、常温になると固まるチョコレートをイメージするとわかりやすいです。
このような性質があるためリサイクルが可能である、加工がしやすい、安価であるというメリットがある一方で、後述する熱硬化性樹脂あるいは金属と比較すると熱に弱く燃えやすい、耐久性が低いなどのデメリットもあります。
代表的なものとしてポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ABS樹脂などが挙げられ、用途も日用品や電化製品、機械や自動車の部品など非常に幅広く、私たちが目にする多くのプラスチック製品は熱可塑性樹脂で造られているのです。
詳しくは後述しますが、熱可塑性樹脂にはさらに汎用プラシチックとエンジニアリングプラスチックという分類があります。
熱硬化性樹脂
加熱すると柔らかくなり冷却すると硬くなる熱硬化性樹脂に対して、熱硬化性樹脂は熱を加えると一度は柔らかくなり、さらに加熱すると硬化するという特徴をもっています。一方で一度固まった場合は再度加熱しても柔らかくなることはありません。オーブンで焼くことで生地が固まるクッキーをイメージするとわかりやすいです。
熱に強い、耐久性が高いといったメリットがある一方で、リサイクルができない、熱可塑性樹脂と比較するとコストがかかること、加工が難しいのがデメリットと言えます。
代表的なものとしてフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられます。その性質から高温下や過酷な環境下での使用が想定される製品や部品に使われることが多く、電気・電子機器、機械などの耐熱部品の素材や接着剤、塗料などに使用されています。
熱可塑性樹脂〜汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチック〜
先ほどご説明した熱可塑性樹脂には、さらに汎用プラスチックとエンジニアプラスチックという分類があります。ここからはそれぞれの特徴や代表的な素材、用途などについて見ていきましょう。
汎用プラスチック
汎用プラスチックとは機械的性質がそれほど求められない用途に使われる樹脂のことを指します。その名の通り、一般的に広く使われている樹脂を指し、世の中に出回っているプラスチック製品の8割が汎用プラスチックだと言われており、私たちがもっとも目にする機会が多いものです。先ほど熱可塑性樹脂の代表として挙げたポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)も汎用プラスチックに分類されます。
熱可塑性樹脂の項目で解説したように加工がしやすいこと、安価であること、リサイクルが可能であることなど、数多くのメリットがあり、日用品、雑貨、梱包材など、さまざまな製品に使われています。一方で100℃くらいの熱で溶け出してしまうので、過酷な環境下では使いにくいというデメリットがあります。
エンジニアリングプラスチック
エンジニアプラスチックとは熱可塑性樹脂の中でも機械的性質を高めたものです。「エンプラ」とも呼ばれます。エンジニアプラスチックはさらに100℃以上の熱に耐えられる汎用エンプラと、150℃以上の熱に耐えられるスーパーエンプラの2種類に分類されます。
汎用プラスチックと比較すると耐熱性に優れていて強度が高く、ある程度過酷な環境下でも使用可能であり、かつリサイクルもできるというのがメリットです。一方でやはり熱硬化性樹脂や金属と比較すると耐熱性や耐久性が劣ることと、若干コストがかかることがデメリットと言えます。
代表的な素材としてポリカーボネート(PC)やポリアセタール(POM)が挙げられ、容器やヘルメット、車のヘッドライドなどに使われています。
樹脂素材〜メリットとデメリット〜
樹脂の分類やそれぞれの特徴についてはご理解いただけたかと思います。素材を選定する際には「樹脂を使っても問題ないか?」「どのような樹脂素材を採用するか?」を考えなければなりません。最後に樹脂を製品や部品・パーツの素材に採用するメリットとデメリットについてご説明します。
メリット
樹脂のメリットとしてまず挙げられるのが軽量であるということです。樹脂製の部品やパーツを採用することで軽量化や性能アップが期待できます。コストが安く大量に生産できるのもメリットです。他にも金属と比較して摩耗性が高いこと、耐水性や耐薬品性が高く腐食しにくいというメリットがあります。
たとえばそれほど耐久性や耐熱性などの機械的性質が要求されない箇所の部品やパーツを金属から樹脂に置き換えることで、品質向上やコストダウンが実現できる可能性があります。
デメリット
樹脂の一番のデメリットとして挙げられるのが、耐熱性が低いということです。特に汎用プラスチックは100℃を超えると溶けてしまいます。他にも紫外線に弱く劣化しやすい、金属と比較して強度が低いなどが挙げられます。
屋外や熱が発生する箇所、力が加わる部分の部品やパーツに関しては樹脂よりも金属を選択したほうがいいかもしれません。ただし、耐熱性が高い熱硬化性樹脂や汎用エンジニアプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックで代用できるケースもあります。求められる機械的性質を把握し、樹脂でそれを満たせるかどうかを検証することが大切です。
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