電解焼入れとは
鋼などの金属製の部品や加工物を電解液に浸して通電させることで加熱する表面熱処理の技術です。
熱処理の対象となる製品が陰極となり、通電すると陽極板との間に電気が流れます。
一定以上の電圧になると、部品や加工物の表面が水素や水蒸気、金属イオンに覆われて、部品との間にアーク放電が生じて熱が発生するというメカニズムです。通電後はしばらく電解液の中に浸したままにして冷却すれば焼入れが完了し、強度や耐摩耗性、疲労強度を向上させることができます。
自動車関連など幅広い分野に活用されていますが、製品そのものではなく、ドリルやタップなど工作機械の刃物や部品に施されることが多い熱処理技術です。
電解焼入れの特徴
通電時間や電解液の温度、電圧などを制御することで、硬化層を任意の深さに設定することが可能です。
また、焼入れをしたい箇所のみを電解液に浸すことで、局所焼入れを行うこともできます。
加熱ムラがなく安定した品質が得られ、加熱した後に電解液で冷却することができるので、生産性の向上にも寄与します。
火炎焼入れなどと比較してCO₂排出量を抑えられるので地球環境に優しいのもメリットとして挙げられます。
- 通電時間や温度、電圧を制御することができる
- 任意の深さに硬化層を設定することが可能
- 局所焼入れにも対応可能
- 電解液を使ってそのまま冷却できる
- CO2排出量が少なく、地球環境に優しい
電解焼入れの流れ
まずは加熱したい部品や製品を吊るし、電解液と陽極板が入った水槽に浸します。局所加熱の場合は、加熱したい部位のみを電解液に触れるようにします。
陽極板に電気を通すと、陰極となる部品や製品との間に電流が発生し、ある程度の電圧を超えると水素ガスや水蒸気、金属イオンが発生して熱が生じます。
予め設定した加熱時間を超えた後は通電を止め、そのまま電解液に浸し続けることで冷却が可能。焼入れ完了となります。
【目的別】熱処理の種類
種類(名称) | 目的 | 得られる効果 |
---|---|---|
焼なまし | 体質改善 | 軟化 |
焼ならし | 体質改善 | 硬化 |
焼入れ | 体質改善 | 硬化 |
焼戻し | 体質改善 | 軟化 |
浸炭 | 表面改善 | 表面硬化 |
窒化 | 表面改善 | 表面強化 |
高周波焼入れ | 表面改善 | 表面硬化 |
炎焼入れ | 表面改善 | 表面硬化 |
電解焼入れ | 表面改善 | 表面硬化 |